値決めは経営、という言葉があるくらい、値段をどう設定するかは経営の重大事です。本書は、その価格設定にまつわるキーワードを行動経済学で、実例とともに教えてくれます。

近道などない

 ただ、値段設定だけで魔法のように売れるなどということはありません。特に安くして売る方法の章のところでは、「コスト削減なき値下げは『麻薬』だ」とも強く警鐘を鳴らしています。言われてみれば当たり前ですが、ここがつながらずに商品の値段だけを考えてしまうことは往々にしてありそうな落とし穴です。

 逆に、価格を高くすれば商品イメージをそれとともに引き上げてくれるアンカリングという効果もありますが、それもその価値を欲しがるお客様に届いているか、というのがポイントになります。

様々なモデルでも同じ点

 本書の中には、普通の販売形式だけでなく、サブスクリプション(定期購読・配送)や無料ビジネスなどの今が旬の販売方式も取り上げられています。

 洋服の定額借り放題サービスの話や、中国でQR決済の手数料がないためにホームレスでもQRコードでお金を受け取るなどの実例も面白かったのですが、ここでも著者は「無料でも高品質を維持せよ」「サブスクリプションはロイヤリティを高めよ」と言います。

 それじゃぁ、そんなにウハウハできないような気もしますが、求められているものに対して、低コストできっちり応えられればちゃんと儲かるし、それが儲かる仕組みということでしょう。

 値段ひとつを考えるだけでも、どのように儲けるかという仕組みが見えてなければ、結局はうまくいかないし、それでは求めてくれたお客様にも応えられない。

値決めはプロポーズ?

 ととどのつまりは、お客様の期待にどうこたえるかということで、これを忘れてしまいがちだとすれば、自社のこれまでの都合であったり、ライバルとの競争であったりということでしょう。

 どのようなお客様がどのような価値を求めているか、それははっきりと表には出ていないものでしょう。その欲求を引き起こさせる最初のシグナルが価格設定だとすれば、プロポーズの言葉を考えるような少しロマンティックな感じもします。人によっていろいろでしょうけれど、芯はブレずに自信を持ってお届けしたほうがいいでしょうね。

『なんで、その価格で売れちゃうの?』著:永井孝尚 PHP新書