先の見えない状況だからこそ

 コロナウイルスの流行は、これまでのやり方を見直すような強烈なインパクトで私たちの社会に影響を与えています。このような先の見えない状況に対して、柔軟に変化しながら対応するためには、参加するメンバーそれぞれの視点や力が十分に引き出されることが大事だと思います。

 ワールドカフェとはあまり聞きなれない言葉ではありますが、いろんな立場の人が入り交じってより広がりをもった会議のようです。この本は実際に運営した中での事例をポイントともに紹介してくれています。詳しい具体例は読んでいただくとして、ワールドカフェが面白そうである、というポイントをいくつか紹介したいと思います。

決めない会議で発想をふくらませる。

 ワールドカフェではテーマを決めて話すセッションが何回か繰り返されます。でも、このセッションは何かの行動のためにするわけではありません。決定しようとすると、そこに焦点があたってしまって、一つの行動以外に広がりが持てなくなることも多いかと思います。

 多くの参加者のそれぞれの知見を活かすためには、あえて「何も決めない」という態度でのぞむことで、それぞれのコメントを活かせます。

 優先順位的なものも関係なく、互いの発言を聞きながら発想をふくらませることで、普段であれば見過ごしていたような視点にも目が届きやすくなります。発言者が小さいテーマだと思っても、そこから別の人が大きく広げることもあります。こうした連鎖を期待するには、プレッシャーの少ないリラックスした場を作ることが大事です。

一回のセッションは少人数で、旅人があらわれる。

 とはいえ、10人20人とでテーブルに向き合って座るとどうしても話せる人、話せない人が出てきてしまいます。

 ワールドカフェは、そのために4~5人のテーブルで一組になります。これで誰もが話しやすい状況になります。ただし、この場合、ほかのテーブルとの共有はどうなるのでしょう。

 ワールドカフェではすくなくとも3回のセッションに分けて、同じテーマの話をします。ここで面白いのは「旅人」があらわれることです。2回目のセッションの時に、残る人と旅人に分かれて、他のテーブルに内容を伝えて共有します。またそこでもアイデアの刺激によって新しい発見もあると思います。

 そして、次のセッションの時には旅人は自分のテーブルに戻って、他のテーブルで得たアイデアをさらに共有します。

 さらに最後の仕上げに、各テーブルからの発表を全員で共有します。ここではマインドマップを使ってみたり、ポストイットをそれぞれが貼りに行くとか色々あります。ここのところは参加者の人数や雰囲気などと相談といったところでしょうか。(20人くらいから100人規模くらいまでは幅があるみたいです)

 ただ、この会話のグループを途中でシャッフルするというのは面白いアイデアで、もっと少ない人数の時でも応用できそうです。実際、事務所でバリュー探索の話し合いをする時はこの形式を使ってました。

カフェのホストの10カ条

 ワールドカフェでは何かを決めるわけではない分、最初の問いかけが非常に大事になります。問いかけを含めた会の目的や雰囲気を作るのは主催者、ホストの役割です。この本の著者が心がけていることとして、リストを載せてくれているので、これを参考にすると、多様性に開かれた刺激の多いミーティングに役立つかもしれません。

  1. 力強い問いを立てる
  2. 会場の下見を忘れずに行い、設定に最新の注意を払う
  3. お客に対する愛情と支援の気持ちを持って、もてなしの空間作りに徹する
  4. 複雑にしないで、シンプルにする
  5. カフェでは、コントロールしないのはもちろん、できるだけ何もしない
  6. できるだけ自分も会話に参加する
  7. アイディアが結びつき、集合知が生まれるように気を配る
  8. 模造紙の活用を奨励する
  9. 参加者の発言にコメントしない
  10. 参加者からフィードバックをもらって、次のワールド・カフェに活かす

(p.74より)

最後に

 ワールドカフェは基本的に対面コミュニケーションを軸にしています。今の状況ではとても難しいものになってしまっています。

 けれども、ここで言われていることの部分部分は活かせることもあるように思います。たとえば、チャットグループを活用してはいるけれど、人数が多すぎて意見に偏りが出てしまう時には、グループを分割しながら話しやすい環境を整えるとか。

 間違いなく大変な状況であると思いますが、これを乗り越えられればチームとして強くなることも同じように間違いがないことだと思います。ワールドカフェに限らないことですが、違いや多様性をフルに活用して今までになかった状況を今までになかったやり方で乗り越えていきたいものです。 

『ワールドカフェをやろう!』著:香取一昭、大川恒